はじめに

2024年3月に東京都の特定非営利活動法人に認定された親子の絆 for JAPAN

離婚後親子を対象としてその活動を行う中、離婚を経験したことのない主婦や未成年者のボランティア応募が続いている。

今回は母親であり、子育てを行いつつ当団体でのボランティア活動を始めたOさんに参画の背景を伺ってみました。

Oさんと親子の絆forJAPANの対談

私がPCBのボランティアに応募した理由

Oさんの自己紹介を読者の皆様にお願いできますか

はじめまして。大学生の息子と高校生の娘を持つ母親です。結婚歴20年、離婚経験なしです。

20代半ばまで宮城県仙台市で暮らしていましたが、結婚を機に東京で暮らし始めました。出産後は子育てに専念し、子供の就学のタイミングで社会復帰しました。この10年ほど仕事と家庭の両立で多忙ながらも充実した日々を送っていたのですが、息子が大学進学で親元を離れることになり途端に時間を持て余すようになり、母としての役割が減ったことに虚無感を覚えかけていたところ、自分も新たな生きがいを見つけたいと思いボランティアの活動先を探しておりました。

「ボランティアをするなら子育て支援や児童虐待防止に関わる分野がいいな」と思っていたところ、共同親権・共同養育に取り組む親子の絆forJAPAN(以下、PCB)の募集広告に出会いました。

親子の絆forJAPANのボランティア募集ページはこちら

PCBの募集のどのような点にご興味を持っていただけたのでしょうか?

私は離婚を経験していませんが、海外の映画やドラマを見ていると、離婚後も両方の親と子が頻繁に交流している姿が描かれています。親同士が頻繁に連絡を取り合っている姿を見て日本とは違うなと思っていました。日本で離婚をしたら単独親権となり母親側が親権をとりやすく、非親権者とはほとんど連絡をとらなくなるというのが慣習なのではないでしょうか。

私も日本の離婚スタイルを当然に受け入れていましたが、PCBのホームページを見て、離婚後の親子断絶の問題に関心を持ちはじめ、そこから色々調べてみると、今日では沢山の親子がその問題によって悲痛な思いをしている現状を知り、もっと深く知りたいと思うようになりました。

立派に成長した子どもたちと出先にて

「子どもたちの権利」について親として思うこと

2人のお子さんを持つ母親としてどのようにお感じになられましたか。

私は子供が好きです。子供と一緒にいられる毎日は幸せで、母親として生きていることが誇りです。おかげさまで自分の人生が豊かなものになりました。そして、自分と同じように我が子にもその幸せを感じて生きていってほしいと思っています。

ただ、自分の経験からすると、子育てはどうしても独りよがりになりがちだと思っています。私の場合“この選択がベストだろう”という自分の価値観を子に押し付けることが多かったです。子供と意見が異なっても「親権者だから、決定権は親にある」という一部の通説が私を正当化していました。ですが、それが間違いであったと気づかされる体験がありました。

息子が大学受験を控えた高校2年の冬、「もう塾へは行かない」と言い始め、私は驚き、受験はこれからなのにとんでもない!と反論しましたが、彼は意思を貫き塾を辞めました。結果、自分で受験勉強のロードマップを描き、目標を達成しました。目を見張る実行力で、息子はこの過程ですごく成長したものと感じています。自分で判断したからこそ、すべて自分の責任だと自覚して取り組んだようです。その経験を振り返って、私は最終的に息子の選択を尊重して良かったと思っています。あの時に「絶対に塾へ行け」と指図しなくてよかったと思っています。彼のやる気と自由を奪いかねないところでした。

この体験から、私は「子供本人の意思を潰さないことが子供自身の生きる力を伸ばす教育なのだ」と強く実感するようになりました。親として、親の責任や権利を主張する以上に、子供自身の選択肢や可能性を与えることが重要なのではないでしょうか。少なくとも私は、それが本当の親の愛情だと感じます。だからこそ、今回PCBに参画して子供の権利を守るための活動に参画したいと考えました。

子供の権利を考えることが本来の親の愛情であるとお感じになられたわけですね。

はい。以前は恥ずかしいくらい感情的な母親だったのですが、息子とのそうした経験を経て、自身の考え方が変わりました。

親だからといって自分の価値観や利害を押し付けるのは正しくないと痛感しました。親は家の中で絶対君主的な立場です。幼い子供たちは抗えません。そんな弱者である子供たちが人生に希望を持てるよう、未来が楽しみになるよう、選択肢を与えること、広い世界を見せてあげること、それが親として大切なことだと思っています。

将来に向かって日々成長していく子どもたち

日本の親権制度の問題点とPCBの活動について

もともとは共同親権・共同養育にどういう印象をお持ちだったのですか?

実は私、最初はマイナスイメージを抱いていました。
これまでは母親という属性だけで親権が獲得しやすかったのに、その立場を取り上げられたら女性は不利だと思ったからです。

ですが、PCBの活動や海外の研究や事例を知ることができ、全くイメージが変わりました。今では、共同親権導入は子の利益を最も重視した制度であり、大変に意味があるものだと考えています。

世界と比べると日本の共同親権導入は遅れをとっていますが、その要因の一つに家制度があると聞きました。日本人にしみ込んだ考え方があること自体は悪いことではないと思いますが、現在は女性の社会進出が増え、男性育休の認知も広がっています。時代の変化と共に新たな考えを積極的に取り入れることは文化の発展にも寄与するのではないでしょうか。

共同親権導入の改正民法施行を控える中、施行後の運用について誰もがケーススタディできるように海外の事例など、たくさんの情報が必要だと思います。

PCBの面接やボランティア参画までの経緯はどのようなものでしたか?

ボランティア情報サイトで偶然目を留め、話だけでも聞いてみようとコンタクトしたところ直ぐに連絡を頂いてお話を聞くことができました。そこで設立されたばかりのNPO法人であることを知りました。共同親権導入の改正民法が成立した直後ということもあり、まさにこれから!という勢いがある点に魅力を感じました。

また、最初は“離婚で親権を持てなかった男性たちが集まって反女性主権的活動を行っているのではないか”という一抹の怖さもありましたが(笑)、その不安を率直にお伝えたところ、「ご自分の目でご判断下さい」と言われ、面接官の方と一緒に議員様との勉強会に参加し、他のメンバーの方ともお話させて頂き、そうした想像と全く違う世界が広がっていて、とても驚いたところでした。

幼い頃の子どもたちと

どういった点に驚かれたのですか?

本気で社会を変えようと考えている人達の集まりだったんです。法律や行政の問題、文化や人々の価値観など、常に子供達の幸せという点に焦点を当て、個人の問題ではなく社会の問題を相手にしている人達でした。

私は離婚の当事者ではないけれど、この人達となら心を一つにして社会問題に立ち向かえると確信を抱き、PCBでの活動を決意しました。女性を憎んでいる団体だと勘違いしてしまってごめんなさい(笑)。

なるほど(笑)、今後、PCBではどのような活動を予定されていますか?

広報・ファンドレイザーとして活動を開始しました。

ボランティアというのは言われた仕事を行うだけと思っていたのですが、PCBは違っていました。まず、「5年後に何をしていたい?」と問われ、「その為になる活動をPCBの為にも行ってください」と言われました。私自身の成長まで意識してもらえたことが嬉しく新鮮でした

考えた結果、かねてから気になっていたファンドレイジングを学びたいと伝えました。外部の団体・個人・企業の方々と子供達の未来をつなぐ架け橋となりたいと思っています。

PCBには様々な分野のプロフェッショナルが集まっていますのでしっかりサポートもしていくれます。ここで自分がスキルを身に着けながら子供達の未来に貢献していく将来像が現実味を持って頭の中に思い浮かびました。

広報・ファンドレイザーとして活動していくOさん

最後に

現在PCBでのボランティアをご検討中の方々に何かメッセージを頂けますか?

PCBのメンバーは気さくな方が多く、共に活動するのが楽しいです。仕事ぶりも優秀で、見ているだけでも勉強になります。

設立間もない新しい団体ですので、これから一緒に試行錯誤していける面白さもあります。

応募時には「求められたことを手伝おう」と思っていた私も、いつの間にかパラレルキャリアの一歩を踏み出しています。新しいことにチャレンジしたいという方にピッタリです。

離婚によって辛い思いをしている子供たちの希望となれるよう、皆さんと一緒に社会規模の課題解決に取り組んでいけたらとても嬉しいと思っています。

本日は対談に協力いただきありがとうございました。
今後も何卒よろしくお願いいたします。

親子の絆forJAPANはボランティアメンバーの方を随時募集しています。ご興味のあるかたは下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。